「メルティブラッド」の歌詞、その2

 前回からだいぶ時間が空いてしまったが、続きである。
 「胸のケモノが 闇の中あざ笑うよ」と言う歌詞は何を意味するのか。
 「胸のケモノ」と言うのは志貴の持っている、人外の存在への殺人衝動だろうか。
 そう考えるとこれは歌詞の一行目とも一致する。「碧の森」とは志貴が遠野の屋敷に連れて来られる前に住んでいた、七夜の故郷と言う事になる。「月姫」の物語の時点では志貴は自分が七夜の里で暮らしていた時の記憶をなくしていて、人外への存在への殺害衝動も封印されているが、「碧の森(=七夜の里)」で志貴の記憶が目を覚まし、「胸のケモノ(=七夜の人間がもつ殺害衝動)」が発動すると言うわけだ。一応のつじつまはあっている。

 しかし、それとは別の考え方もあって、と言うのは「メルティブラッド」のオープニングで、「胸のケモノが~」と言う歌詞が歌われる瞬間に表示されている絵は、「ネロ・カオス」の姿なのである。
 ネロ・カオス。またの名を「裸コート」。(注・作中ではそんな呼ばれ方はしていません。)裸の上にコート一枚を着ただけの姿で町を徘徊すると言う恐ろしい男だ。
(注・それが恐ろしいのではないです。超凶悪な吸血鬼なのです。)
 アニメ「真月譚 月姫」では「やつ(ネロ・カオス)は顔を見たものを生かしてはおかない。」などと、なんか人間の犯罪者みたいな事を言われていて、全然悠久の時を生きる吸血鬼と言う感じじゃなくて、株が下がった所を追い討ちをかけるようにあっさりと志貴に倒されて全然立場がなかったりしたが、今ごろどうしてるだろうか。元気だろうか。
 …じゃなくて。何が言いたかったかと言うと、こいつの得意技、使い魔の召喚。こいつは666匹の使い魔を持っていて、それを自分の体の胸から召喚するのだ。使い魔の姿はケモノだったり怪物だったりいろいろだ。
 …なので、もしかしたら、「胸のケモノ」と言うのはネロ・カオスが自分の胸から使い魔(=ケモノ)を召還している所で、そのケモノが何かをあざ笑っている、と言う場面をそのまま歌ってるだけなのかもしれない。だとしたら歌詞の意味の考察なんて意味がなくて大笑いである。もしそうでないなら何で歌のこの部分のタイミングでネロの絵が出てくるんだろう。謎である。

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 次の歌詞、「巡る意思の中」。
 何気ない言葉だが、これだけでもちょっと謎だ。
 普通、「意思が巡る」とは言わないのじゃないだろうか。
 「巡る」と言うのは、ある種の移動を意味する言葉だが、移動するポイントが決まっていて、そのポイントを移る場合に使う言葉ではないだろうか。
 例えば、「季節は巡る」と言う。季節は春、夏、秋、冬と言う4つのポイントを規則的に移るから「巡る」と言う言葉が使えるのだ。
 そのほか、「巡る」と言う言葉を使うケースとしては「四国八十八箇所めぐり」とか、「古戦場めぐりの旅」とか、とにかく移動するポイントは決まっている。
 それに引き換え、「意思」と言うのは移り変わる物ではあるが、どのように移り変わるかはあらかじめは分からない事が多い。なので、普通は「巡る」と言う言葉は使わない。
 なのに、ここでは歌詞は「巡る意思の中」なのだ。意思が、いくつかの決まっているポイントの間で移り変わっていると言う事になる。ここまで理屈っぽい展開だが、間違ってはいないはずだ。
 では、意思が移り変わっているその「決まっているポイント」とはどのような場所なのだろうか。
 それを考える前に、そもそも「意思」とは誰の意思なのかと言う問題があるが、これは「月姫」シリーズの主人公、「遠野志貴」の意思と考えて間違いないだろう。
 なぜならば、歌詞の続く部分が次のようになっているからだ。
「傍にいて白き人よ」
 この、「白き人」が「月姫」のメインヒロイン、アルクェイドの事であると言うのは間違いないだろう。
 「『月姫』のメインヒロインはシエル先輩だー。」の様な魂の叫びはあったとしてもここでは無視する。後半部分が「秋葉に決まってるだろー。」であっても同様だ。「さっちんだー。」だったらちょっと気持ちは分かるが。
 余談だがアニメ「真月譚 月姫」での弓塚さつきの扱いはあれはどうだろう。弓塚さつきファンはどう思っているのだろうか。ほっと胸をなでおろしているのか、残念に思っているのか…。複雑な所だろう。

 ここの所、アニメを見ていない人の楽しみを奪わないようにあいまいな書き方をしていますが、「要するに何がいいたいんだ、はっきり言え!」と言いたい方のために、以下に見えない文字でその事を書きます。要するにアニメでの弓塚さつきの扱いについてです。読みたい人は下の四角の範囲をマウスでドラッグして選択すると、見えない文字を読むことが出来ます。)
 アニメ「真月譚 月姫」では、弓塚さつきは、どの吸血鬼とも直接的に関わる事はなく、吸血鬼になる事もなく、基本的に平穏な学生生活を送るだけなのです。

 まあともかく、月姫ファンの人なら「白き人」と言われたらそれはアルクェイドだと、だれでも分かるだろう。「月姫」のパッケージの裏面を見ても分かる。こう書いてある。
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純白の吸血鬼は微笑む。
「私を殺した責任、とってもらうからね」
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 これはアルクェイドのセリフであり、それが「純白」なのだから、「白き人」はアルクェイドなのである。完璧な理論だ。(←威張って言うほどの事か?)
 しかしアルクェイドのどこが「純白」なのかと問われると難しい。上に着ている服は白だけどね。それを言うなら琥珀さんが着ている割烹着も白だ。秋葉の着ている高校の制服もまあ、白といえなくもない。そんな事を言い出すとシエル先輩だって高校の制服は着ている。翡翠のメイドキャップも白だ。

(続く)


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